解放の仕方

2006-12-22
story

解放の仕方

他人だらけの世界から逃げ出したいとき、1人ぼっちの世界へ駆け出したいとき、あなたは考えなくてはいけない。置いてきぼりにするものについて。

誰に迷惑をかけてもいけないのだ。名前を置いてゆくのなら、戸籍を自分で処理しなくてはならない。家族を置いてゆくのなら、家族に自分のことを忘れてもらわねばならない。体を置いてゆくのなら、自分で体を消していかなければなるまい。

全て自分で、だ。切り取るように、黒く塗りつぶすように、消し去るように、自分を処理しなくてはいけない。悲しませても、ざまあみろと笑わせてもいけない。自分に関する一切の影響を許してはならない。髪の毛一本でさえ、己の存在を残しては意味がないのだ。

誰かの記憶の中に住むことは許されない。誰かを記憶していくことも許されない。世界をなかったことにする。自分を初めからなかったことにする。

何かを置いていくというのは、そういうことだ。ひどく惨めで、制限された沈殿の先だ。

だからこそ、よく考えなくてはいけない。安易な決断は自分の道を狭める。広く高い丘の上で、よく周囲を見渡す必要があるだろう。そうしてぎゅっと目をつぶる。自分の過去に思いをはせる。

誰か一人でも、例え憎い人でも恋人でも他人でも孤独を味わった無機質な部屋でも、何かが頭に思い浮かんだなら、あなたは全てを置いていくべきでない。

目をつぶった瞬間、きっと他人だらけの世界では、無数の手が伸びているだろう。大半はあなたをおとしめる手だ。あなたは自分を省みる必要がある。しかし、ごく少数の手はあなたをつかみとる手だ。あなたはその手を握り返す。他人だらけの悲しい世界は、そんな奇跡が存在している。大丈夫、世界はあなたを愛しているのだから。