GO HOME

2007-11-10
story

GO HOME

恐怖した。強くなりだした風か、それとも冷たさを増してくる空気か、全く違うなにかに。

こちらへ向かってくる気配がした。ずるり、ぬるりと、陰湿な音と共に。影とそれが、ゆっくりと重なるのを、何をするでもなく傍観していた。

ひやりとした汗が伝う。別に怖いことなんてなかったはず、なのに。真っ暗な道に一つの光、街灯、点灯して、ついには、消えた。まるでそれが一つのピリオドのようだと思う。号砲なのだろうか。

運動会、隣で身構える友人を気にしつつ、両手をぐっとにぎりしめ、待った。あのピストルの音だと思えば、そんな気もした。あのかたたましい音がくるのを今か今かと待ちわびている、あの時の心境そのもの。

真っ暗な光景から目を離し、空を見た。枯れかけ、色が抜けた木の葉の間から切り出された空気がきれいだ。月が見える。とてもきれいだ。葉が一枚、二枚と落ちてくる。どうかすると雪よりもそれは美しい。

地面にはらりと落ちた瞬間を見つめた。そうして周囲の明るさに気付く。夜が明けていた。真っ暗なものなどないように、周囲が輝いていた。

ああ、なんと。思わず感嘆する。一瞬の闇に人生を投影していた。ああ、なんて美しいんだろう。空が青から黒になるのか、はたまた黒から青になるかは知らないけれど。葉が本来緑なのか、一瞬の力で緑になるのかは知らないけれど。瞬きの間に美しくなる。恐ろしくも素晴らしい場所に生まれた幸運。気付く人は何人だろうか。何千何万といる人間の中で。

どこが君の家なのか知らないけれどお帰り。もうじき私もそこへ帰るから。