fanart:無意識下の白昼夢

2011-03-22
fanart

fanart:無意識下の白昼夢

WEB漫画『Tree Of Light』二次創作

真っ白な画面を見て、すぐに夢だと気付いた。オレも夢を見るのか。そんなことを考えながらぐるりと顔を右に向けた。

真っ白だ。

ぐるりと左に向ける。

やっぱり真っ白で、感覚がずれる。立っているのか、浮いているのか、何も分からなかった。

(見つけたら壊せ。)

ぼんやりとした人の声。男か女かも分からない。

(見つけたら殺せ。)

聞いたことがあるのだけど、思い出せない。なんだか、最近はこんなことばっかだ。知っているけど、知らない。覚えているけど、覚えてない。見たことあるけど、見たことない。

(見つけたら排除せよ。)

エコーみたいに、真っ白な空間にがんがん響いた。声はいつまでもうるさい。

「うるせえなあ。静かにしろよう!」

そう大声で言ってみると、それに対抗するみたいに声が大きくいくつも響いた。うるさいなあ。と今度はつぶやいた。頭を抱える。耳を塞ぐ。オレは小さく赤ちゃんみたいに丸まったつもりだけど、真っ白い部屋ではその感覚も上手く掴めない。

(見つけたら抹殺せよ。)

あんまりにもうるさいから、「ああ、分かった!分かったってば!」とやけくそになって叫んだら、それはウソみたいに消えてしまった。静かになった白いこの場所が、ちょっとだけ寂しい。

レヴァン、と呼ばれて目が覚めた。その声は大丈夫、知っている。

フィーだ。

ソファで居眠りしていたオレの顔を覗き込んで、「大丈夫?」と心配そうな声で聞いてくる。夢の中で聞いた変な声が、まだ耳の奥に残っているみたいだ。うるさくって、なんか頭がガンガンする。夢って、こんな、嫌なモンなのか。

ぼんやりと「へーきだぜ」と呟いたオレを、フィーがまだ心配そうに見ている。うーん、うーん、と遠くの方でフィーがうなってる。なんだが、元気が出ない。風邪かな、これって。

「そうだ、お買いもの行こっか」

そう言ったのはきっとオレの為なんだって分かったから、オレはかくんって首を下に落とした。これが了承の合図って誰から聞いたんだっけな。フィーはちょっとだけ目を丸くして、それからにっこりと笑った。ちょっとだけかわいい。ちょーっとだけな!


ガヤガヤとした街中はいつ見てもすげえ。夢の内容も、夢見たことも忘れてオレは街中を走りまわった。おもしれえ、すげえ、そんなことばっかり口から出る。そんで、ちょっと経ってから気付く。フィーがいない。

「迷子かあ?全く、しょうがない奴だなフィーは!」

そう言ってまた街中をとことこ走り出す。今度もまたきょろきょろと左右を見渡して、一人ひとりの顔をちゃんと見た。かわいい、かわいくない、美人、おっさん、犬、あっまたかわいい。人はいっぱいいるけど、フィーはいない。フィーはちっこいからな、ちゃんと探さないとダメだ。フィー、フィーと鳴き声みたいに名前を呼ぶ。

視界の隅でフィーを見つけた。バッとそっちを向いて、手を振る。もう一度名前を呼ぼうとした時だった。男の大声。人が輪になってる。その真ん中に見えたのはフィーの困った顔と、知らないオッサンの怖い顔。誰だ、あいつ?手を振りかぶっている。フィーが目をつぶる。

あ、殴ろうとしてるんだ。

フィーの敵なのか?殴るのは敵だ。敵はやっつけなきゃ。見つけたら、排除しなきゃ。敵はやっつけなきゃ。オレは走る。その時、ちょっとだけ、今日みた夢を思い出せた気がする。

敵はやっつけなきゃ、やっつけるんだ。知らないオッサンの腕を掴んで、止めて、ひねりあげる、唸り声をあげたら、顔を思い切り殴り飛ばして、動物みたいに飛びかかってきたから、蹴り飛ばして、ごろりと横になったら腹を踏んでやって、それからそれから。蹴って、蹴って、蹴って、殴って、殴って。腕に重みを感じる。

何だよ、誰だよ、と思って見たら、フィーだった。必死そうな顔で、オレの右腕を両腕で抱きとめている。その顔が必死すぎて、オレは首を横に倒した。なーんで、そんな顔しちゃってんの?オレ、なんの武器も使ってないし、危ないことしてないぜ。だって、それは危ないからダメって言われたんだ。

「だめだよ、レヴァン、もうやめて」
「そうなのか?うーん?やめる?」

言ってることが難しくって首をまた横に倒す。

「まだ、やっつけてないぜ?」
「いいの。やっつけなくていいんだよ。絡まれただけなんだから」

腕をおろすと、フィーも両腕を離す。あ、これは安心した顔だ。それからたまーに見る、ちょっと怒った顔になった。

「何でも力で解決するのは良くないよ!暴力反対!」

そっか、ああいうのもダメなのか。賢いオレはまた一つ学習した!「分かったぜー!」と力強く頷いて、騒ぎになりかけた場所から二人で逃げ出した。目立っちゃダメだからな!

立ち去る瞬間、フィーがちらっとオレがやっつけちゃったオッサンを心配そうに見た。人が集まってる隙間から、血が少しだけ見える。倒れてるオッサンには悪いことしたな。オレはバカじゃないから、そんなにひどいケガはしてないと思う。多分。

「暴力はだめか?」

走りながらそう聞いた。ぜえぜえ言いながら、「だ、めだよっ!絶対だめっ!」とフィーが答える。ふうん、そっかあ。

じゃあ、「神」をぶっ殺すオレってだめなのか?絶対に?でもオレそうしなきゃいけないのになー。ダメって言われたらどうしよう。困るぜ。今はぜえぜえ言ってて辛そうだから止めておこう。今度そう聞いてみようかな。覚えてたら。

おるびた!」の20000HITのお祝いで、勝手に春茶さんに捧げます。 
ええい、言い訳はしないぜ!おめでとうございまあああああす!