科学のための世界演劇

2011-03-22
story

科学のための世界演劇

(舞台の幕が上がるも、真っ暗。)

(白く、うっすらと儚い照明がつき、舞台の真ん中に一人の少女が立っている。)

(朗々とした声で、堂々と劇場を見渡す少女1。)

少女1「誰かが言った。時は絶えず、と」

(照明が落ちる。)

(青く、ほの暗い照明がつく。)

(四人の少女が一列に並んで立っている。順に、囁き声で語り出す。)

(右端の少女)
少女2「私は試作品。暴走するため実験と失敗の果てに生まれました。」

(右から二番目の少女)
少女3「私は試供品。殺されるため搾取と改造の果てに生まれました。」

(右から三番目の少女)
少女4「私は成功作。未来のため犠牲と被害の果てに殺されました。ただ少しの欠陥も、完璧へと近付く礎の一つなのです。」

(右から四番目の少女)
少女5「私は改訂版。欠陥のため試行と錯誤の果てに殺されました。最後の欠陥は、次世代で解消することを運命づけられています。」

(四人が一斉に、朗々と。)
少女2~5「二つの針の狭間で、私たちは呻いています。」

(照明が消える。)

(少女1が声のみ登場。)

少女1「私は製品第一号。栄光のため欲望と願望の果てに生まれました。屍は弔ってやらねばなりません。墓守は眠りにつくべきなのです。」

(少女2~5が声のみ。立て続けに唸る。)
少女2「欺瞞だ。」
少女3「偽善だ。」
少女4「罪悪だ。」
少女5「愚鈍だ。」

(青い照明と共に、五人の少女が登場。舞台の中心で少女1を囲んでいる。)

少女2~5「我々の針は、歪み、騒ぎ、狂い、憎んでいます。」
少女1「私はそれを正します。」

(少女2~5、少女1に一歩だけ近付く。堂々とした素振りでそれを眺める少女1)

少女2~5「私たちを無かったことにしてしまうのですね。」

(少女1、朗々と宣言する。)

少女1「時は絶えず、私は絶やします。」

(少女5がグラスに入った赤いワインを少女1に手渡す。)

少女1「私は飲み干そう。そうすることが必要であれば、私はそうしよう。」

(少女2~5二歩下がり、頭を抱えてうずくまる。)

(幕がおりはじめる。)

少女1「断ち切ろうとするのなら、私が断ち切ろう!二つの針はとても狭い。正しい物事は、いつだって狭苦しい。どこかの扉のように!」

(少女1が倒れる。それと同時に少女2~5が立ち上がる。)

少女2~5「狭い扉は開かない。我々のためには決して開かない!」

(幕に火が付き、燃え盛る。沈黙の中、閉幕。)

オムニバス企画『時間』に投稿した物をちょっと修正しました。元は2009/12/10に作成。テキスト→イラスト→動画(作曲)というリレー形式での合作企画でした。在は動画の閲覧ができないようです。残念。音源は持っているので、聴きたい方は個人的にご連絡ください。